(名古屋大学出版会・8400円)
◇今に変わらぬ社会を映す傑作ドタバタ劇
来年はダーウィンの生誕二〇〇年になるので、世界の各地であれやこれやと賑(にぎ)やかなことになると思われる。それと直接の関係はないかもしれないが、昨年はゴルドーニの生誕三〇〇年にあたった。それに便乗するかたちで刊行されたのが、この『ゴルドーニ喜劇集』。彼の手になる喜劇九本の翻訳であるが、上下二段組で約六五〇頁(ページ)ある。これだけ部厚い本になると、私などわけもなく嬉(うれ)しくなってしまって、書評することにした。
(名古屋大学出版会・8400円)
◇今に変わらぬ社会を映す傑作ドタバタ劇
来年はダーウィンの生誕二〇〇年になるので、世界の各地であれやこれやと賑(にぎ)やかなことになると思われる。それと直接の関係はないかもしれないが、昨年はゴルドーニの生誕三〇〇年にあたった。それに便乗するかたちで刊行されたのが、この『ゴルドーニ喜劇集』。彼の手になる喜劇九本の翻訳であるが、上下二段組で約六五〇頁(ページ)ある。これだけ部厚い本になると、私などわけもなく嬉(うれ)しくなってしまって、書評することにした。
(新潮社・1260円)
誰もが知っている『ティファニーで朝食を』の、村上春樹による新訳である。それだけでもわくわくする。そして、期待にたがわない見事なできばえだ。半世紀前にアメリカで出版された作品が、装いも新たによみがえった。従来の訳との味わいの違いは歴然としていて、着物を着ていた女性がドレスにお色直しして颯爽(さっそう)と登場したような感じさえ受ける。
村上春樹は小説家であるだけでなく、同時に翻訳家でもあり、仕事の時間のかなりの部分を翻訳に割いている。これは彼ほど有名な作家の場合、異例のことで、世界的にも類を見ない。たいていの作家はいったん地位を確立すると創作に専念し、翻訳などという「二次的」な仕事に携わるヒマはなくなるからだ。しかし、村上春樹の場合、翻訳は決して副業というようなものではない。
◇池内紀(おさむ)・評
(アーツアンドクラフツ・2730円)
いつのころにか「野村純一」の名前を覚えた。昔話の研究を通してである。ひと味もふた味もちがう。性急に意味づけをしない。語り手の言葉を大切にする。ときには息づかいまでも注意する。その人の記憶のなかに蓄積された世界への深い敬意がある。