- Jan 30 Fri 2009 00:27
今週の本棚:富山太佳夫・評 『二十世紀フランス小説』/『ヨーロッパは書く』
- Jan 23 Fri 2009 00:22
今週の本棚:鹿島茂・評 『ルイ十六世…』=ジャン=クリスチャン・プティフィス著
◇『ルイ十六世 上・下』
(中央公論新社・各3990円)
◇知られざる「最も優れた敗者」の素顔
三年前、パリ行きの飛行機で『パリ・マッチ』を開いたら、与党と野党の大物政治家がともに「ヴァカンス中に読んで面白かった本」の筆頭に本書を挙げていた。
- Jan 16 Fri 2009 00:19
今週の本棚:丸谷才一・評 『フロイトのイタリア…』=岡田温司・著
◇『フロイトのイタリア--旅・芸術・精神分析』
(平凡社・3990円)
◇精神分析は「永遠の都」のせいで生れた
フロイトはイタリアが大好きで、生涯に二十数回もこの国へ旅行した。彼の思想および精神分析理論の形成には、このイタリア好きが大きくかかわっている。一八九七年、旅に出る直前に友達に出した手紙にこうある。
- Jan 09 Fri 2009 00:17
今週の本棚:富山太佳夫・評 『ビューティー・サロンの…』=ポーラ・ブラック著
◇『ビューティー・サロンの社会学--ジェンダー・文化・快楽』
(新曜社・2940円)
◇美容ビジネスの遺産が作家を支えた
最初にことわっておくべきかもしれないが、エステとかビューティー・サロンなるものに対する関心は、私の場合、ゼロである。皆無、絶無、からっきし無い。「世間は、『ただ爪(つめ)にマニキュア塗ったり、マッサージしたり……ただそれだけの仕事』と見てるのよね。男性はちょっと風俗っぽいと思うようだし」というセラピストの声が本文中に引用されているが、私などは間違いなくそのような「世間」のひとりということになるのだろう。まあ、どうでもいいけれども。但(ただ)し、私の場合、そんな材料であっても、本になれば別。本になれば読むし、書評する。
- Dec 25 Thu 2008 00:12
今週の本棚:江國香織・評 『夜はやさし』=F・スコット・フィッツジェラルド著
(ホーム社/集英社・2730円)
◇とどめおけないものを、とどめた小説
厚ぼったい本である。やさしく繊細な小説であり、きわめて美しい小説でもある。完成されていると私は思う。美しく歪(ゆが)んだまま完成されている、と。『夜はやさし』というこの一冊の長編小説が、傑作である理由はたぶんそこにある。歪んだままというところ。なぜならそれは、人が、あるいは物語が持つ、天然の歪みだからだ。美しいに決まっている。本来、小説のなかには収まらないはずのものなのだ。